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フナの目

 フナのコラムです。.

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更新日 2008-07-30 | 作成日 2008-04-29

フナの目

fhoto by MAYA

窓の向こう

FH000002_1.jpg いつも電車の中では寝ている。いや寝るようにしている。寝だめが出来ない小生にとって朝の電車の1時間は貴重だ。でも本当は15分でいい。意識が夢の中にあるのは。そうなるまでは自然に自然に、ゆっくりゆっくり電車に揺られながら...。そのための1時間なのだ。
 その日もいつものように窓際に座り、携帯で朝のニュースの確認。そうしていると自然に意識がうつろうつろになりはじめた。「よしよし。」頭の中で思い始めたその時、ふと窓枠に目をやった僕の目に小さな虫がいた。彼だ。たぶん。「もう彼がいるのか。こっちに飛んできたらやだな。せっかく寝ようとしているのに。」ちょっといやな気分になった僕はそれでも目をつむった。
 「だめだ。寝れない。さっきの彼のせいか。どっかいったかな?」僕は目を開けさっき彼がいた場所を見た。まだいた。でもどうも様子がおかしい。窓に向かって少し動いてはひっくり返るのだ。飛ぼうと羽をばたつかせるのだが飛べないのだ。必死にうごめくだけで、場所の移動もままなならず、窓枠のかなり狭い範囲の中でもがいている。「怪我をしてるな。」
 それから僕は寝るのを止めて彼を見た。ずっと見た。どんな怪我してるんだろう。人だったら骨折とかそんなんなんだろうが、彼に骨があるかどうかは知らないし、人だったら血とか出るんだろうが、彼はそりゃなんか出るんだろうが小さすぎてわかんないし、そんな考えても分からないことを考えても意味ないから、それを考えるのはやめた。
 彼は動き続けていた。同じことを何回も何回も繰り返していた。窓の向こうに行きたい。僕にはだんだんそう見えてきた。そして彼は誰にも助けを求めていない気がしてきた。彼は自分自身の力で飛ぼうとしているのだ。窓の向こうへ。
 ふと聞きなれた駅のアナウンスが聞こえてきた。あと少しで僕の降りる駅だ。「あっ、寝てた。」知らないうちに意識は夢の中に行っていたみたいだ。「そうだ、さっきの彼は...」 さっきと同じ場所でさっきと同じ動きを繰り返していた。やはり窓の向こうには行けないみたいだ。僕はまたじっとそれを見つめた。
 電車に乗って1時間、僕の降りる駅だ。最後にもう一度彼に目をやった。そして駅を降りて仕事場へ歩きだした。途中、彼を思った。これから彼がどうなるか、大方の予想はついている。命は終わりが来るのだ。どんな命であっても。でも、彼は最後まで戦うだろう。生きるということだけで。守るものなんてたぶんないんだろう。窓の向こうにも...
 それは、朝と僕と窓枠と彼の関係が、妙なバランスで保たれた、不思議な空間だった。